2018年2月26日月曜日

スポーツとビジネス

いよいよ今年度も残すところ1ヶ月となりました、石黒です。
多くのメダル獲得に湧いた平昌オリンピックが閉幕しました。
冬季五輪としては史上最多の13個のメダル獲得は選手の努力はもちろんのこと、それを支えるコーチやスタッフ、スポンサーなど様々な人の協力あってこそだと思います。

そんな中、私が印象に残ったのは「男子カーリング」です。
強豪チームに懸命に食らいついていくも予選敗退。
その後のインタビューで両角友佑選手は次のように話しています。

-4年後については?。

 「今はもう何にもイメージがない。まずはちょっと女子のチームみたいに来年も頑張ってみようという企業がいるわけでもないので、まずは自分たちがカーリングを続けるかどうかをチームで話し合いをしないといけないし、やるってなった場合も男子の場合はスポンサーが今までのような活動をするのに、仕事をしながらとか、仕事を休ませてくれる企業があるのかとか。今季は五輪もあったので、すごく皆さん力を入れてくれましたけど、今後も支援を受けてカーリングができるかどうか。そのあたりの環境が整うのであれば、僕は続けたいと思いますけど」
                 デイリースポーツ 2018年2月18日記事より転載

選手の実力とは別に、金銭的問題からチームそのものを存続させるのが困難であること。女子の「そだねージャパン」が話題になる一方での男子チームの過酷な現状に感じ入るものがありました。
女子チームもスポンサー集めに苦労している話を聞きます。
日本において競技人口が少なく、それほどなじみのないスポーツが多い冬季五輪では毎回話題になるテーマです。


という訳で、今回はスポーツとビジネスに焦点を当ててみます。
テーマは、スポーツのショービジネス化です。
簡単に言えば、スポーツの試合をすることで興行収入を得ることです。
観客の入場料、グッズ販売、テレビの放映権などがこれにあたります。



スポーツのショービジネス化に力を入れている国の一つがアメリカです。
例えば、アメリカで最も人気のスポーツであるNFL(アメリカンフットボール)。
その年間興行収入は、130億ドルを超えると言われています。
選手の平均年俸は2億円であり、日本のプロ野球選手の平均年俸4000万円を大きく上回っています。
その試合環境も凄まじく、収容人数が10万を超えるスタジアムが10カ所ほど。
東京ドームの収容人数は5万5千人ですが、アメリカのスタジアム収容人数ランキングTOP50にも及びません。

どれだけ多くのアメリカ人がアメフトを愛しているかがよくわかると思います。
アメフトをはじめ、アメリカのスポーツ市場は日本の10倍の50兆円。
これだけの市場規模を維持しているのは、スポーツを魅力的に見せる工夫があるのです。

「アメフト編:戦力の均衡」
たくさんお金を持っているチームは、それだけ優秀な選手を集めることができます。
そうなるとチームの資金力=チームの強さになってしまい、面白くありませんよね。
そこでNFLでは、サラリーキャップ制度を導入し、選手に払う総年俸を全チーム同額に規制しています。

「バスケットボール編:ルールの改正」
発足当初は全く人気のなかったNBA。
試合をスピーディーに面白くするために導入されたのが30秒ルール。
ボールを保持してから30秒以内にシュートをする必要があるため、故意にボールを保持し続けるような遅延行為ができなくなりました。
これによりボールを確保し続けられる大型選手ではなく、ボールを扱うテクニックに優れた選手、いわゆるスーパースターが登場してきました。

他にもテレビ放映にあわせたルールの変更、チケット売上数の確保、テレビ放映料の確保など各スポーツで様々な工夫が凝らされています。
これらの工夫はスポーツを魅力的に見せるだけでなく、多くの人、お金を集めることでその競技の発展を実現しています。
そう考えるとカーリングも、この競技をショービジネス化していくにはどうすればいいのか?ということが重要になるのかもしれません。
競技そのものから「魅せるスポーツ」への改革が必要なのかもしれませんし、そのためには現場の選手だけではなく、日本カーリング協会、スポンサー企業、メディア、政府・自治体など様々な異業種との協力が必要になるでしょう。
いずれにしろ、選手が全力で打ち込める環境を作るための経営戦略が必要です。

選手の皆様、感動をありがとうございました。
経営学部 石黒







2018年2月19日月曜日

今年もJapan Study Programの短期留学生と交流しました

 皆さん、こんにちは。経営学部教員の柴田です。
 東京経済大学では、海外の協定校・友好校の学生を対象に、日本語や日本文化を学んでもらう短期留学プログラム「TKU Japan Study Program」を毎年7月と2月に開催しています。今回は2月13日(火)から27日(火)まで、中国と韓国の2つの大学から来日した短期留学生4名が参加しています。今年もまた、2月15日(木)に短期留学生の皆さんと、柴田ゼミの3年生が一緒になってグループワークを行い、今回は昨年2月のJapan Study Programで来日して、9月には本学大学院修士課程に入学した院生にも加わってもらいました。


一緒に考えてもらうテーマは、「日本のコンビニエンスストアは、中国や韓国に進出して、すっかり馴染み深い存在になっている。しかし、同じチェーン店であっても、いろいろと日本と違う部分がある。どこが同じで、どこが違うかを実際に店舗を調べて、なぜそのような違いが生まれるのか、その理由を考えよう。」というものです。東京経済大学周辺の徒歩圏にも、セブンイレブン、ローソン、ファミリーマートの3大チェーンのコンビニエンスストアが出店しています。まずはみんな一緒に店舗を見てまわり、その後、教室で「同じところ」「違うところ」をなるべくたくさん取り上げて、内容を整理します。下の写真は、みんなで話し合っているところです。




 話し合いの結果をもとに違いが生まれる理由を考えて、最終的にパワーポイントで資料作成して、短期留学生の皆さんに日本語で発表してもらいました。こちらの写真は、発表の様子です。発表の際には、国際経営論担当の山本晋先生と、中小企業経営論担当の山本聡先生にも加わって頂き、さまざまな視点からコメントをいただきました。



 コンビニエンスストアを見ていると、日本ではどのチェーンでも店舗での商品販売だけでなく、公共料金、税金、年金の払い込みや、宅配便の発送、受け取りや、情報端末を使って大学入試の受験料の払い込みや、コンサートチケットの購入などを行うこともできます。また、来客が使えるトイレを用意しているところがほとんどです。しかし海外では、同じセブンイレブンであっても、商品販売以外の付加サービスは限定的ですし、来客用のトイレは見かけません。一方、中国や韓国では電子マネーの普及が進み、短期留学生に聞いても現金のたくさん入った財布を持ち歩くことはないと言います。このあたりは日本より進んだ仕組みが導入されているようです。コンビニエンスストアの本部の海外事業担当者は、当然各国で違いのあることは充分承知しているはずです。しかし「こちらの方が、もっと便利な良い仕組みだ」と思えることを、全ての国に同じように導入しているわけではありません。ではなぜ、各国で違いが生じるのか?については、さまざまな理由があり、とても一口で説明できるものではないと思います。今回の発表では、店員の応対や仕事への取り組み方の違いについて大きく取り上げていました。その理由について、短期留学生の皆さんは「日本の時給はサービス料が含まれている」からではないか、という面白い推論を行っていました。毎回、同じようなディスカッションを行っていても、メンバーが異なると、異なる視点で異なる推論となるところが興味深いと感じています。異文化コミュニケーションは身近なところから始まるのです。

(文責:柴田高)

2018年2月12日月曜日

広がり始めるAIマーケティング!

2018.02.12

少し暖かくなってきたような気がするのですが、これは一時的な天候でしょうか?
受験生にとっては、いま一般入試真っ只中ですね。高校2年生以下の方々にとっては、志望校を具体的に考える気持ちが高まる季節かもしれませんね。
東京経済大学の本藤です。


今回は、AI(人工知能)について、簡単に触れてみたいと思います。
AIというと、ヒト型ロボットをイメージするでしょうか?
人間の仕事を剥奪してしまう恐ろしいものという印象を持っている人もいるかもしれません。
でも、本当に創造的な発想はAIには難しいかもしれません。
このAI(人工知能)がマーケティング手法に活用したソリューション・ビジネスが急速に拡大しています。以前、紹介したファミリーマートとLINEが取り組もうと考えている未来型店舗もそうでした。※2017年7月掲載



AIはビッグデータを活用したディープラーニング型のソリューション(解決策)です。
多くの人は「人工知能」というと、スターウォーズのC3POとか手塚治虫の鉄腕アトムをイメージするかもしれませんが、少し違うかもしれません。


AIによるディープラーニングというのは、人間のように「ゼロから考え出す」ことはできません。膨大なデータに基づいて機械的な判断基準を与えられれば、人間には到底不可能な計算量をこなして、与えたロジック(論理式)に応じて結論を導き出してくれるのがAIなのです。
つまり、AIマーケティングというのは、ひとりひとりのお客様に対してフィットしたソリューションをロジカルに提案するためのアプローチになります。


これまでお得意様に対しては、お店の人は「本藤様にお勧めの新商品が入りましたよ」とか、「きっと本藤様はこんな商品に興味があると思いますが、いかがでしょうか?」という推奨販売が行われていました。アマゾンのサイトでも、それぞれの人にフィットした商品提案が行われたりします。
それをもっと広い範囲にわたって「機械的な情報処理」によって対応できるものは対応していこうとする仕組みづくりになります。その方が、人間の記憶によるよりも遥かに的確なアプローチが選択できるのです。

購買履歴や性別・年齢、来店頻度や客単価から、このようなお客様は「接客を好まない」とか「価格評価が最優先される」とか「価格には拘らない」というような属性まで判断できるようになってくる可能性があります。


ボクが洋服を買いに行くときは、必要なときには声をかけますから接客について欲しくありません。でも、百貨店などでは、「私が来たのに接客につかない」と不満を感じるお客様もいるかもしれません。そんなお客様の性格を判断して、商品提案やサービス対応する形を追求しています。

これは、BtoCの販売のシーンだけではなく、生産や物流などの社内的な業務から、BtoBの営業業務、それだけではなく自治体サービスやインフラ産業においても広範囲に渡るソリューションになりつつあります。


お客様に今よりももっと快適に過ごしてもらうためのサポートツールとして、AIはどんどん身近な存在になってきています。


文責:本藤貴康(流通マーケテイング入門、流通論、流通マーケティング演習担当)

2018年2月5日月曜日

「東日本大震災の被災地気仙沼市での取り組み」特別企画講義『インバウンドビジネスの理論と実践』より。


流通マーケティング学科の丸谷です。22回目の執筆です。私はグローバル・マーケティング論(簡単にいうと海外でどのようにマーケティングを行っていくのか)を専門分野にしているのですが、履修者の方々からインバウンドや爆買いについても取り上げて欲しいという要望がここ数年増加していました(私の授業では基本的にはインバウンドとは反対の、日本企業が海外に向けて行うマーケティングであるアウトバウンドを中心に授業を行ってきました)。



懸案解決のために企画した『インバウンドビジネスの理論と実践』の開始と図書館の展示については、20171016経営学部ブログにおいて取り上げました。



今回は企画者である私が見ていて、特に感銘を受けた20171219日にご講演頂いた東日本大震災の被災地でインバウンドビジネスの実務に携わってこられてきた有限責任監査法人トーマツアドバイザリ-事業本部パブリックセクターアドバイザリーPRプランナーの百瀬旬先生の講義に関して取り上げてみます。



百瀬先生は、広報、マーケティング領域で15年の実績がある方で、対外イベントの運営ディレクターも複数回経験された後、気仙沼市における地域DMO設立に貢献なされ、水産事業の商品開発やプロモーション支援を官民連携で推進、観光等の情報発信プロジェクトのアドバイザーリング業務及び産業人材の育成(経営未来塾の運営)を行ってこられた方です。


                  百瀬旬先生


皆さんダークツーリズムという言葉をご存じでしょうか?

ダークツーリズムとは、災害被災跡地、戦争跡地など、人類の死や悲しみを対象にした観光のことです。オバマ大統領も訪問された広島の原爆ドームや、のんさんの声が世界観とマッチしていて私も何度も泣いてしまった『この世界の片隅に』で描かれた呉市や彼女が訪ねた広島市などが有名ですが、東北地方では、今回の講義でも気仙沼市と連携した取り組みの中で取り上げられた陸前高田市の奇跡の一本松も非常に注目を集めました。


東日本大震災の被災地である気仙沼市の取り組みは、日本のダークツーリズムのリアルタイムな実践例です。

百瀬先生の講義は以下の流れで進みました。

1.東日本大震災について
・被災状況
69か月経った今の暮らし
・阪神淡路大震災や熊本地震との違い
・復旧から復興へ
2.気仙沼市の挑戦新しい基幹産業としての「観光業」
・水産業に頼らないまちづくり
DMO設立に向けたステップ
・インバウンドへの取り組み
3.質疑応答

1.東日本大震災についてでは、実際の震災の被害や百瀬先生が実際に被災地である気仙沼で居住されていた仮設住宅などについて多くの画像を使って解説頂き、被災地の現実を理解できました。


2.気仙沼市の挑戦新しい基幹産業としての「観光業」では、被災地であることを活用して行う観光業について、水産業を中心とした現地の産業構造を踏まえた上で、地域の観光業の司令塔DMODestination Management Organization)の設立から設立後5年間の取り組みについて具体的に講義して頂きました。








3.質疑応答に関しては、その場の質疑だけではなく、毎回取っていた意見質問カードに頂いた全ての質問にしっかり回答いただきました。



私が初めて企画した特別企画講義であったため調整に手間取ることも多かったのですが、なんとか掲げたテーマ通り、前半ではこの分野の専門家である野口晃一先生に、理論を解説頂き、後半では実際にインバウンドビジネスの現場で実務にかかわられている皆様にご講演頂きました。



受講者の皆さんに毎回提出してもらった意見や質問のレベルも回を追うごとに上がっていき、最後に提出してもらったインバウンド映像作成の課題についても、今回は映像の制作のやり方まではそれほど踏み込めなかったのにもかかわらず、一定の内容のものが提出されました。



今回の好評を受けて、東京オリンピックに向けて映像制作などより具体的な企画の立案も組み入れた企画も進行中です。更なる企画のレベルアップに向けてご意見なども随時募集中です。

(文責:丸谷雄一郎(流通マーケティング学科教授))