2017年12月4日月曜日

丸山珈琲本店に追加取材


流通マーケティング学科の丸谷です。21回目の執筆です。私はグローバル・マーケティング論(簡単にいうと海外でどのようにマーケティングを行っていくのか)を専門分野にしているのですが、海外取材を行ううちに、海外で生産した商品を日本へ輸入し提供する企業に関しても研究するようになりました。


コーヒーもそうした商品の1つです。18回目のブログで紹介した2013年に明石書店から出版された『ドミニカ共和国を知るための60章』を執筆する際の取材では、ドミニカ共和国におけるフェアトレードコーヒーに関して、輸入を行うアタベイコーヒー(http://www.atabey.jp/)に全面協力を頂き、生産の現場を取材する機会も得て、以降コーヒーに関しては機会を見て取材を続けています。

                    ドミニカ共和国アタベイコーヒー取材時の写真

2016年に同文舘出版より出版された『小売&サービス業のフォーマットデザイン』において「カフェ業界」について執筆する機会を得て、スターバックスコーヒー、ブルーボトルコーヒーという新旧黒船2社と、日本における新興勢力である丸山珈琲について取材して以降、カフェ業界も継続的に研究する分野の1つとなりました。


前置きが少し長くなりましたが、今回は軽井沢の丸山珈琲本店の追加取材を行ったので、そのことについて書きたいと思います。

丸山珈琲の創業者丸山健太郎氏は、1991年に自家焙煎を始めるとストイックに「コーヒー道」に邁進していった 。おいしいコーヒーは「豆の選択、焙煎、抽出、提供」の4段階を経て提供されるが、当初焙煎のみを一途に突き詰めていたのです。
20014月にそんな丸山氏に転機が訪れます。彼はブラジルのスペシャリティコーヒー協会が主催するパーティーに参加し、そこで焙煎を究めるだけではなく、豆の選択の重要性に気が付きます。このパーティーにおいて豆の選択を突き詰めるには、コンテナ買いできる販売規模を確保する必要があることを認識しました。そして、パーティー後の帰国前にスターバックスの源流となったピーツコーヒーをマイスター・ロースターのジム・レイノルズ氏の案内で訪問した。日本からは時代が早すぎて撤退したビーツコーヒーは、カリフォルニア州バークレーで規模と質の両立を果たしており、規模の必要性への認識が確信に代わり、飛行機の中で事業計画書を書き始めたそうである。

帰国後上質のスペシャリティコーヒー を販売するために、100グラム500円で販売し少量を大切に飲んでもらうモデルから、500グラム1500円で日常的に飲んでもらうモデルへと戦略を転換した そのために、スペシャリティコーヒーの魅力を普及していくために振る舞い、全国でミニコーヒーセミナーを開催し、このセミナーは現在丸山珈琲の一事業となり、2011年には東京セミナールームとなっている。
              コーヒーの品質による分類
                  
2002年にはブラジルのカップ・オブ・エクセレンス(以下COE)「アグア・リンパ」を当時の史上最高価格で落札し、その後も世界のCOE豆の落札を続けていった。丸山は2002年のブラジルCOEの当時最高価格での入札を契機に日本におけるCOE伝道者となり、各国のCOE豆の買い付けを行いつつ、スペシャリティコーヒーの普及を進めている。丸山自身は年間150日スペシャリティコーヒーの産地を飛び回り現地情報を収集し、丸山珈琲倶楽部という独自のコミュニティの構築や東京セミナーハウス設置などにより、情報発信を行っている。ACEの理事や一般社団法人日本スペシャルティコーヒー協会の副会長兼広報委員会委員長としても普及活動に従事している
また、同社はおいしいコーヒーの条件である抽出、提供においてもレベルを向上させるために、国際的に通用する人材の獲得や育成にも注力しており、2014年には小諸店の井崎英典バリスタがアジア人初バリスタ世界チャンピオンとなった  。丸山珈琲は日本の喫茶店文化を批判的に検討し、COEに代表される究極の「豆の選択」 、日本の喫茶店文化を継承した高水準の「焙煎」によってスペシャリティコーヒーの伝道師となりつつある
今回軽井沢での丸山珈琲本店を訪れる機会を得た。私はこれまで関東を中心に取材で10店舗のうち半数の5店舗を訪れてきた。しかし、趣のあるクラシックな本店を訪れて、洗練された西麻布、尾山台、鎌倉などのお店とは異なる軽井沢ならではの落ち着いた空間、コーヒー豆とともに重要な原料である水の素晴らしさと、器へのこだわりも感じられた。

               趣あるクラシックな本店
丸山珈琲のブレンド・クラシック1991とチョコレートケーキ

開店当初から出されているチョコレートケーキや本店限定の開店当初のブレンドを再現したブレンド・クラシックは、西麻布店で出される碑文谷のケーキ店ジュン・ウジタや蘆花公園のケーキ店Relationのケーキや日々変わるスペシャリティコーヒーの数々と比べると、今味わうと個人的には好みではないが、同社の変化を実感しイメージできる有意義な取材となった。

         西麻布店にて(COEコーヒーとジュン・ウジタのケーキ)

本店は軽井沢らしい緑に囲まれた空間であり、軽井沢気分を満喫するといった意味でも軽井沢に行かれる際には、訪れてみてはいかがだろうか?
 (文責:丸谷雄一郎(流通マーケティング学科 教授)