2016年3月23日水曜日

本を出しました!

こんにちは!
経営学部の吉田靖(経営財務論担当)です。
学生のみなさん、卒業、進級おめでとうございます!
学生のみなさんにとっては、卒業式や次の学年・学校あるいは就職の準備のシーズンですね。
我々教員にとってもいろいろな区切りとなる時期です。
大学教員の仕事にもいろいろありますが、研究もその一つです。そして、研究の成果は学会での発表や論文、著書などの形で世の中に出ます。学会は専門家の集まりで一般の方々の目に触れにくいかもしれませんが、著書は(大きめの)書店、ネットの書店、図書館などで見られることが多いでしょう。
この3月19日には写真の本を共著で出しました。
 
カタカナが多い題名ですが、「コモディティ」って何でしょうか?
英語ではcommodityです。
日本語では「商品」という言葉になりますが、世の中で売っているものは全て商品ですし、例えば、銀行預金なども金融商品ですから、意味が広すぎるので、敢えて「コモディティ」としています。では何かというと、具体的には、金(おカネではなく、ゴールドの方)、ガソリン、ゴムなどの工業製品、米などの農産物です。より一般的には、同じ品質のものをある程度多くのところで生産できるものです。
 
次は漢字ですが、「市場」って改めて考えてみるとなんでしょうか?この場合は「いちば」ではなく「しじょう」と読みます。
一般的には売る人と買う人が出会って取引をする場ですが、「コモディティ市場」とつながった場合は、前述のものを取引する場になり、さらにこの本では「東京商品取引所」などの取引所を指しています。
「東京商品取引所」ってお馴染みでない方もいるかもしれませんが、東京の人形町に建物があります。ウェブサイトは こちら (クリックして下さい)です。
 
そして「市場のマイクロストラクチャー」とつながりますが、これは市場を形成している取引のルールや取引のシステム、さらにはそれらの下で取引する人の行動や価格や取引の変動などを指しています。つまり、これらを分析している本ということですね。
 
ところで東京商品取引所に行っても、金や米の倉庫はありません。ガソリンを積んだタンクローリーが集まっているわけでもありません。青果市場や魚市場とちょっと違いますね。
 
そんな現物がないのになぜ取引ができるのでしょうか?
それは、「先物」といって、なにを、いつ、いくらで、どのくらいの量を、どこで取引するという契約そのものを取引しているから、できるのです。
 
ややこしいですか?でもこれは、江戸時代からある取引方法なんです。それも、江戸時代の日本人が世界で初めて考え出して、今では世界中に広まっている取引方法です。
その世界最古の先物取引所は大阪の堂島にあって米を取引していたのですが、今はその跡に下の写真の記念碑が建っています(夜に撮影したので見にくくて申し訳ありません)。
 
さて、市場って何のためにあるのでしょうか?
もちろん、売ったり買ったりという取引をするためにあります。その他にも、経済学的に見ると、ここで多くの人が集まって取引をした結果、価格が決まり、その価格をさらに多くの人が知ることにより、意思決定の役に立つという「価格発見機能」と呼ばれるとても重要な役割があります。例えば価格が高くなれば、生産しようとする人が増えます。つまり、価格の変動によって、世の中に起きていることがわかるようになるということですね。
 
次の写真はガソリンスタンドの価格の表示です。自動車を使う人には重要な価格ですね。少し前にはこの写真のように1リットル99円だったときもありました。
 
 
 
同じガソリンスタンドですが、別の日には値上がりして104円になっていました。
この価格変化の大きな要因は、ガソリンスタンドの仕入れ値の変化と思われます。仕入れ値を直接に外部の人が知ることはできませんが、先程の東京商品取引所で取引されているガソリンや原油の価格が大きなヒントになります。
 
みなさんだったら、ガソリンの価格はいくらがよいでしょうか?
ガソリンを買う人は安い方がよいし、売る人は高い方がよいですよね。
それではどうすればよいかというと、経済学の理論では市場で決まった価格が最もよいと言うことが証明されています。(場合によってはそうでない場合もあるので、規制が必要な場合もありますが、それもどういう場合かが証明されています。)
 
そのために、市場では多くの人が集まって、公正な価格が決まる必要があります。
 
ということで、このような重要なコモディティ市場にどのような問題があるのかを分析して提言することが世の中の役に立つように、ということを考えて本を書きました。決して、どうやったら儲かるかという本ではありませんので、お間違えのないように。
 
みなさんも、4月から何か新しいことを勉強してみましょう!大学では、みなさんのやる気次第で沢山のことが勉強できます。そういうみなさんの意気込みに応えるためにも、どんどん研究をしていかないといけないと思っています。
 
   吉田靖(よしだ やすし)