流通マーケティング学科の丸谷です。8回目の執筆です。今回は2010年3月のチリ大地震で延期されていた南米チリへの現地調査を実現することができたので、少し馴染みのない国かもしれませんが、チリ現地調査の際に訪ねた「記憶と人権博物館」と博物館の展示テーマと関連が深いお勧めのチリ映画について取り上げたいと思います。
私は日本では西友を展開している世界最大のウォルマートという小売業者について研究しているので(詳細は、インド調査前編(2015年3月9日にアップ)に書いてありますので、そちら見て頂ければ幸いです)、ウォルマートが進出している国に関してはアフリカの一部の諸国を除いて訪問し、現地調査をしています。
予算と日程の制約もあって、首都サンティアゴのみの短期調査でしたが、地下鉄網がかなり整備されている都市ということもあり、ウォルマートが展開する小売業態に関して最低一か所ずつは訪問することができ、1週間程度の滞在にしては充実した調査を行うことができました。
ウォルマートが経営する食品スーパー
ウォルマートが経営するディスカウントストア
ウォルマートが経営する倉庫型ディスカウントストア
調査対象店舗の地下鉄最寄り駅であるキンタノルマル駅近くにあったのが2010年1月に開館した「記憶と人権博物館」(詳細は以下のサイト参照:http://www.museodelamemoria.cl)でした。
チリでは東西冷戦下の1970年に世界で初めて自由選挙によって合法的にアジェンデ社会主義政権が樹立されました。しかし、アジェンデ政権は1973 年にクーデターにより倒され、アジェンデ大統領は自殺しています。1974年にクーデターの首謀者であったピノチェト将軍による軍事独裁政権が誕生し、1990年の民政移管まで続きました。そして、このクーデターから軍事政権下での人権侵害をテーマに設立されたのがこの博物館です(写真参照)。
博物館の展示はクーデター当時の状況の映像や人権侵害された人々の写真を中心になされており、正直楽しい気持ちになるものではなかったですが、チリの1つの側面を知るために訪れるべき場所であるとわかる場所でした。
他方、この展示を見ているうちに思い出した映画がありました。2013年の第85回アカデミー賞の外国語映画賞にもノミネートされたNOというチリ映画です(詳細は以下のサイト参照:http://www.magichour.co.jp/no/)。この映画はハリウッド映画にも出演し、かつて『モーターサイクル・ダイアリーズ』で若き日のチェ・ゲバラの役も演じた(青春映画としても素晴らしい作品)、ガエル・ガルシア・ベルナル演じる広告マンが投票までの27日間にたった1日15分だけ許されたテレビ放送枠を用いて民政移管をもたらした実話に基づく作品です。
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サンティアゴはなかなか訪れる機会のない皆様も映画NOは2015年4月にDVDソフトが日本でも発売されているので、ぜひご覧になるといいお勧めの映画です。
文責 丸谷雄一郎(流通マーケティング学科 教授)