2015年8月5日水曜日

手軽にできる自由研究?? 【学問のミカタ:宿題】

 東京経済大学の本藤です。

 まだ夏休みが始まったばかりの人が多いですよね?
 8月になったばかりなので、「宿題」と言ってもタイミング的にはピンと来ないと感じるかもしれません。とは言っても、高校3年生や受験生にしてみれば“夏の天王山”ですから、夏休みの最初の1週間で宿題を片付ける人もいるかもしれませんね。
 
 「夏休みの宿題」というコトバから連想する時期として、小学生時代をイメージする人が多いのではないでしょうか?
小学生時代の夏休みの宿題は、計算ドリルや読書感想文などがありましたが、難しくて困ったというよりも、計算ドリルのような膨大な反復課題に心が折れそうになった記憶があります。それでもボクが宿題を夏休みの中盤には終わらせていたのは、後半まで“力仕事”が残っていると夏休みを満喫できないという気持ちが働いていたからです。しかし、早め早めに考え始めても最後の最後まで仕上がらなくて四苦八苦していたのは夏休みの自由研究でした。

 


 

 課題が具体的であれば、それは“作業”であり“力仕事”になることが多いと思います。これは、時間をかければ時間をかけた分だけ進捗します。しかし、自由研究は違います。担任の先生からの指示は「何をやっても構いません。どれだけ時間をかけるのかは研究課題によって異なります。何から何まで好きなように決めて、好きなように模造紙にまとめたものを休み明けに発表してもらいます」という課題は、曖昧なことおびただしいのです。
夏休みの大半は、「何をやろう、何をやろう」と悩み続けて過ごします。後半に差し掛かかる頃には「もう時間がないから、これでいいや」と、とりあえずの方向を決めるのですが、こんどは「準備に何を用意すればいいのか」とか「どうやってまとめたらいいのか」というような、研究に入る前の“心労”が甚だしいのです。しかも、まだほとんど進捗しないうちからの話なのです。
 
 
 
 ボクの小学生時代の記憶と、自分の息子や娘が小学生だった数年前の記憶を比較しても、それほど大きな差はないのですが、夏休み中にも受験塾に通う小学生にとっては少し見方を変える必要がありそうです。そもそも小学校の宿題や自由研究は、受験勉強の邪魔になると考えている人が多いかもしれません。そうなると、自由研究を決めるにあたって、それなりに受験の知識に役立ちそうな研究テーマが好ましく、受験勉強の時間を犠牲にしなくてもいい作業内容であることが好ましい・・・という評価基準で「自由研究」を捉えているケースが増えてきているようです。
 
 
 そこで続々と発売されているのが「自由研究キット」です。多くの企業から様々な「商品」が考えられています。ちょこちょこっとネットで「自由研究キット」と検索しても、Google122万件もヒットします。このヒット件数の中には感想やブログの件数も含まれていますが、教育ビジネスを広く手掛けている学研やノートや事務用品で有名なナカバヤシと言った有名メーカーからも発売されています。なかには、味噌メーカーとしてトップシェアにあるマルコメが「味噌手作りキット」を発売していたり、北越紀州製紙といった製紙業が「紙すきキット」を発売していたりしています。ボクの小学生時代では考えられないほど“お手軽な自由研究”を実現させてくれています()
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 このように消費者ニーズのあるところには、そのニーズの大きさに比例してマーケット(市場)が形成されてきます。この消費者ニーズは、必ずしも商品だけとは限りませんし、消費者が具体的にイメージできているとも限りません。
今ではコンビニエンスストアで銀行預金が引き出せたり、公共料金を支払えたり、コピーやファックスが使えたりするのは当たり前ですが、どれも30年前には想像もできないことでした。でも、今のようにコンビニエンスストアがそこここになかった当時、消費者は誰一人として、近所の小売店でこれらのサービスを実現して欲しいなんて考える人もいませんでした。このように、消費者が不便を感じていても、具体的な欲求として自覚していない需要を「潜在需要」と言います。これを見つけ出してカタチにして、ソリューション(解決策)を提案するのがビジネスです。潜在需要を顕在化させた企業は、大きなチャンスを手にすることになります。
 

 
 世の中のビジネスは、すべて誰かの役に立たなくては成立しません。そして、そうでなければ存続しません。つまり、世の中に存在するありとあらゆるビジネスは、誰かのために何かしらの役割を果たしています。それをいち早く見つけ出した企業は「先行者の優位性(First Mover’s Advantage)」を手にするケースが出てきます。つまり、誰かの不便、不満、不安といった問題意識を素早く察知するアンテナが、ビジネスチャンスの発見につながります。
 そういう意味では、この「自由研究キット」というのは、明確で具体的な課題ではなく何をしていいか分からないとか、受験勉強の時間が侵害されてしまったり準備に手間取るというような不便や不満が多い自由研究を予定調和させるためのニーズを捉えています。
 
 暑い時季が続きます。水分や塩分を十分に補給して、熱中症には気を付けてお過ごしください。因みに、人工甘味料ではなく砂糖を使い、塩分も水分も効果的に補給できるのは、昨年度に本藤ゼミが取り組んだポカリスエットが、体に最も優しい水分補給のベストアイテムだと思います。
 
本藤貴康(流通マーケティング入門、流通論、地域インターンシップ担当)
本藤貴康ゼミナールBLOG http://hondo-seminar.blogspot.jp/