2015年6月1日月曜日

【学問のミカタ】梅雨に売れる商品は?


 東京経済大学の本藤です。
 今月のお題は「梅雨」。
 マーケティング的視点で「梅雨」を考えていきます。

 梅雨になると消費者の需要が強まる商品があります。
 どんな商品をイメージするでしょうか?



 フツーに考えると、傘やレインシューズ(雨靴)、レインコートが直接的なイメージで思い浮かびそうですね。
 でも、これらの商品は毎年購入するものでしょうか?

 少なくとも僕は毎年買いませんし、そもそもレインシューズやレインコートが欲しいと思ったことはありません。
 ただ、傘の撥水効果は経年劣化するものなので、雨の多くなるシーズンに買い替え需要が発生する可能性はあります。レインシューズやレインコートの需要を喚起するためには、やはり流行を発信することで、これまで使用していた商品を古いと感じさせる(陳腐化させる)ようなマーケティングも考えられます。とは言っても、近年のアパレル業界の傾向として、流行り廃りのない定番アイテムが支持されているので、陳腐化戦略の有効性も一部の消費者に限られてくる可能性があります。

 

 僕の主な研究領域となっているドラッグストアでは、梅雨になると売れる商品があります。
 梅雨のシーズンは、前線を伴う低気圧が長期的に日本に停滞するので、神経痛が起きやすいシーズンと言えます。そんな時に需要が高まる医薬品は、ロキソニンやバファリンのような鎮痛薬です。神経痛や偏頭痛などの自覚症状であれば、鎮痛薬を購入しようと考えて、お店に足を運ぶことになります。でも、お客様は「鎮痛薬」を買いに行くというだけで、必ずしも「ロキソニン」や「バファリン」を買いに行かないかもしれません。そこでメーカーや小売業によって仕掛けられるのが店頭マーケティングになります。

 「鎮痛薬」の売場に行って、お客様に「効きそう」と思わせる陳列を工夫します。あるいは、大きく目立つPOP(売場に掲示される価格や商品特性に関する情報提供ツール)を設置したりします。そこで、購入してもらえて満足できれば次回は「鎮痛薬」を購入しに行くのではなく「ロキソニン」や「バファリン」を購入しに行くことになるかもしれません。
 このように目的来店させられるような商品は、売場において「強い商品」として位置付けられることになります。

 
 
 でも、せっかくお店に来て頂いたお客様が目的の商品だけで終わらせてしまってはいけません。店内では関連するニーズや違ったニーズを引き出そうと仕掛けています。

 この時期にお店に行くと、除湿剤や防カビ・防虫剤がセットで大量陳列されていることが多くなります。神経痛対策で来店したお客様に、「そういえば湿気が強くなってきたから、除湿剤も買っておこうか」と課題認識させると、新たな需要を掘り起こせるのです。

 このように「鎮痛薬を買いに行こう」と考えて来店し購入するような購買行動を「計画購買」と言い、想定もしていなかったのに店頭で見て急に購入するような購買行動を「非計画購買」と言います。それぞれメーカーや小売業が仕掛ける店頭プロモーションは異なってきます。
 また、「計画購買」にフィットした商品もあれば、「非計画購買」を仕掛けやすい商品もあります。一般的には、医薬品は目的買い(計画購買)が多いのに対して、お菓子などは衝動買い(非計画購買)が多いようです。
 
 
 
本藤貴康(流通マーケティング入門、流通論担当)
本藤ゼミ活動報告ブログ(http://hondo-seminar.blogspot.jp/