2015年5月25日月曜日

インド研究調査(後編)

流通マーケティング学科の丸谷です。6回目の執筆です。今回は講義が休みの期間でもあるので、研究者としての大学教員の側面について分かってもらうために、研究について書きたいと思います。少し長くなりそうなので、2回に分け今回は後編です(前編は3月9日アップされています)。
一応前回も載せましたが、今回のルートです(前回はデリーからコルカタまで紹介し、4日目夜にバンガロールに移動したところまででした)

5日目は小売にも関連性が強いインドの新たな側面であるITの最新事情をうかがうために、ITインド最大手のインフォシステクノロジーズにて特に流通に纏わるお話を伺いました。中国が「世界の工場」ならインドは「世界のバックオフィス」といわれるほど、インドのIT産業は発展を遂げていますが、実際に現地でお話を伺い、労働環境といったハードの充実ぶりもさることながら人材の優秀さに驚きました。



インフォシスを後にして4時ごろになってしまいましたが、日清インディアにて現地資本や欧米資本との実際の競争に関してリアルなお話を伺いました。インドで強い流通チャネルを有するマギーを展開するネスレ社や現地資本(特にこの分野ではインドタバコ)との競合は非常に熾烈であり、厳しい競争状況を打開するための取り組みについて具体的にお話いただきました。



6日目はムンバイに移動した後、現地大手百貨店ショッパーズストップのCEOに直接店内を案内していただきながら、インドの小売事情や同社の取り組みについてお話をうかがいました。外資とのパートナーシップを通じた取り組みやインドの民族衣装ブランドの販売などのお話は興味深く、百貨店でのインタビューの後、隣接する同社が運営するハイパーマーケットでも幹部の方に店内を案内いただきお話をうかがいました。




午後はK-LINEインディアにて物流事情をうかがいました。インドの地域ごとの規制の複雑さに関しては有名ですが、その実態が具体的に荷物を運搬する際の事例を多くうかがうことでイメージでき、インドにおける物流の難しさを理解することができました。

7日目は早朝丸紅の現地社員の方に現地小売事情に関するレクチャーを頂いた後、飛行機での移動前にムンバイ市内の小売施設を視察し、ジャIプールに移動し、8-10日目はインドの都市以外の小売事情を視察し、最終日に小売にも強い影響がある文化の理解のためタージマハールを視察した後、アグラ郊外にてウォルマートがインド国内で20店舗展開する卸売業態を視察しました。


出発までデリー市内のモールを視察した後、10日目の夜21時15分のエアインディアAI306便にて帰国しました。

丸谷雄一郎(グローバル・マーケティング論担当)
























2015年5月18日月曜日

多摩信用金庫との共同研究シンポジウム

中小企業経営論担当の山本です。

読んで字のごとく、私は中小企業の研究を専門にしています。中小企業経営論は特殊な学問で、とにかく企業の現場にお伺いすることが研究の柱の一つになります。そのため、日本全国、または海外の企業、自治体、金融機関の方々と仲良くさせていただいています。

東経大に着任して以降、折に触れ、大学周辺の企業にお伺いしていたところ、地域の著名な金融機関である『多摩信用金庫』とつながりができ、共同研究を始めて2年以上が経ちます。

その間にゼミ生が多摩信用金庫に入行したり、年に1~2回、多摩信用金庫地域経済研究所と、共同シンポジウムを開催するようになりました。

2015年3月27日には、

「多摩の中小企業の知られざる国際化と経営者の姿」

という題目で、地域の企業、自治体向けにシンポジウムを開催。ゼミ生にも日頃の地域課題の解決に向けた研究成果を発表してもらいました。以下に、そのときの写真を紹介します。

・地域の世代間交流の進展
・障がい者雇用の進展

に関する方策を報告しました。もちろん、学部生の研究には限界があります。例えば、学生の立場で、企業経営者向けに提言をする、、、ことをおこがましいと捉える方も少なくないかもしれません。

なればこそ、学生が自分たちの研究を社会に発信できるような仕組みを構築することが、重要なのだと考えています。そして、学生はそうした場に最大限の時間とエネルギーを使い、果敢にチャレンジすることで、大きな学びを得ることができるのだと思います。このblogを読んでいる皆さんも、ぜひ、本学でチャレンジしてみてください。

                         研究報告の風景



                シンポジウム終了後の記念撮影@進一層館


2015年5月4日月曜日

【学問のミカタ】ブログ全学コラボテーマ『スポーツ』

スポーツ用品のブランディング!
 
経営学部の本藤です。今月の全学共通テーマは「スポーツ」です。

 

花粉の季節も終わり、天気のいい日も多くなってきて、スポーツには絶好の季節を迎えています。

高校生にとってのスポーツの舞台は部活ですね。
どんなウェアを着ていますか?
どんなグローブやラケットを使っていますか?
学校指定やユニフォームだと指定されたものになりそうですが、プライベートでスポーツを楽しむ時には、何を考えて選びますか?
そんなあなたの意識が、スポーツ・ブランドを育てていく戦略的な視点になります。

ところで世界第一位のスポーツ・ブランドを知っていますか?

  













第一位がナイキで、第二位がアディダスです。

国内第一位はアシックスで、第二位がミズノ。
ちなみに、ナイキの売上高とアシックスの売上高は、桁が二つほど違います。
これは顧客の購入理由の違いが大きく影響しているのかもしれません。
僕の趣味はテニスなのですが、ミーハーな想で錦織圭が使っていたウィルソンのSTEAM95を使っています(彼は今季からBURN95を使用)。そもそもはロジャー・フェデラーのファンだったので、ウェアはナイキを愛用しています。
たぶん、サッカーであれば本田圭佑に憧れて同じブランドを使ったり、野球であれば田中将大に憧れて同じブランドを選んだりすることがあるのではないでしょうか?
 










 
お菓子や清涼飲料水のように、特に“違い”を感じづらい商品は「コモディティ商品」と呼ばれますが、これらの商品は“価格が安い”とか“おまけが付いている”というように、その商品自体の機能や品質以外の部分で選択購入してもらうしかないケースが多く見られます。こういう商品は、売場での見せ方が大きく影響します。
しかし、スポーツ・ブランドに関して言えば、テレビや雑誌を通じてのマス広告が有効に働くケースが確認できます。
(僕が好きな分野の)テニスで言えば、長期に渡ってトッププレイヤーに名前を連ねているロジャー・フェデラー(世界ランク2位)やラファエル・ナダル(同4位)はナイキと長期契約を結んでいます。嬉しいことに、世界ランク1位のノバク・ジョコビッチと5位の錦織圭はジャパン・ブランドのユニクロと契約をしてくれています。
ユニクロと言えば、日本国内でのイメージとしてはコストパフォーマンスのいい機能性衣料というイメージが強いのですが、もしかしたら海外のテニスファンにとってのブランド・イメージは違うのかもしれません。
このように、スポーツ用品のブランディングは、広告塔になってくれる有名アスリートとの契約で、ブランド・イメージを構築する方法も選択されます。
 
 
 
 
これが、ブランド・ポジショニングのひとつです。
サッカーをする人、野球をする人、テニスをする人で、それぞれのブランドのポジションは変わってきますし、更に憧れるトッププレイヤーが誰かによっても、人それぞれにブランドのポジションは変わってきます。
このポジショニングとは、特定ブランドの消費者の心理的位置づけを、差別的優位性として確立するマーケティング・アプローチになります。そして、このポジショニングはターゲットとなる顧客を誰に設定するかによっても、期待できる成果が変わってきます。
スポーツ・ブランドとして世界第一位のナイキと、国内第一位のアシックスは、マーケティング戦略のアプローチが質的に異なっていそうです。
僕の個人的なイメージでは、アシックスはバリバリ体育会系のイメージが強いですね。
アシックスは、部活で汗を流して、大きな大会を目指す利用者が主な顧客層で、あくまでもスポーツシーンでの利用が中心ではないでしょうか?
 


 
これに対して、ナイキやアディダスは、必ずしもスポーツシーンだけの顧客層ではなさそうです。ナイキの契約アスリートは、スマートなフェデラーや力強いナダルのほかにもお洒落なマリア・シャラポワなど、アスリートだけではなくモデルとしての彼女のイメージもブランド・イメージとして活かしているように感じられます。その成果として、機能的なスポーツ用品だけではなく、カジュアルウェアとしてのポジショニングを構築しています。 
 


最近は、街中でも、ヒールではなくスニーカーをお洒落に履いている若者が増えていますが、この時にアシックスやミズノではなく、ナイキやアディダスの方がお洒落なコーディネートになると感じさせるのもマーケティング戦略の成果なのです。その成果として、ナイキやアディダスは、アシックスやミズノと桁が2つも違う売上規模を実現していると言えます。
 
 
文責:本藤貴康(担当:流通マーケティング入門、流通論、地域インターンシップなど)
   ※本藤ゼミナールの活動案内(http://hondo-seminar.blogspot.jp/)を始めました。