2015年3月30日月曜日

産学コラボプロジェクト報告2―香りはスポーツの成績を向上させるのか?―

こんにちは。流通マーケティング学科の北村です。
今日は、今年度のゼミ2年生のうち6名が2学期(後期)に取り組んだ、産学コラボリサーチの成果を紹介します。
今回のリサーチテーマは、「香りの使用によりスポーツの成績は向上するのか?」です。昨年度に引き続ぎ、ハーブ・アロマ関連のリーディングカンパニーである「株式会社生活の木」さんとのコラボとなりました。昨年度のリサーチ(香りは学習時の集中力を変えるのか?)については、こちらをお読み下さい。

生活の木によると、スポーツ選手の中には、練習時や試合時に香りを取り入れている人がいるそうです。例えば、スキージャンプの船木和喜さん、卓球の福原愛さん、大相撲の貴乃花部屋などが取り入れていると報道されています。そこで今回は、データを取って効果の裏付けをしてみよう、ということになりました。

2年生がおこなった作業は、次の通りです。
先行研究のレビュー(類似のテーマでのリサーチや研究事例の確認)、香りの種類や特徴を含むアロマテラピーに関する勉強、リサーチの方法や内容の検討、本学体育会本部(各部の代表の集まり)での趣旨説明、興味を示してくれた部活への個別説明とリサーチ日時の調整、プレ調査(リサーチの予行練習)と本調査、統計学および統計解析ソフトの使い方の勉強、本調査で得られたデータの分析、結果の考察と生活の木へのプレゼン。
今回のキックオフは9月でしたので、それからわずか数か月で以上の作業を進めたことになります。本当によくやってくれました。

今回、調査に協力してくれたのは、弓道部、ゴルフ部、陸上部の皆さんです。弓道部では射的、ゴルフ部ではパッティング、陸上部では100m走でデータを取りました。以上の競技の前に、香りをかがない場合とかいだ場合で、結果に差が出るのかどうかを調べたのです。
なお、部活動選定基準は、結果が対戦相手や当日の天候等に左右されにくく、個人競技であり、覚醒・興奮状態よりも鎮静・集中状態になることが必要な競技、というものです。用いた香りは、鎮静・集中効果があるとされるラベンダーでした。

肝心の結果ですが、成績向上効果はやや見られたものの、有意水準には達しませんでした。有意水準とは、統計的に「成績が向上した」と言ってよいとされるレベルであり、具体的には、「香りを用いた方が香りを用いない場合よりも成績がよい」という仮説は95%の確率で正しそうだ、というレベルです。リサーチでは、成績のほか、競技前後の脈拍についてもデータを取ったのですが、競技後の脈拍の落ち着き方についても同様の結果でした。
ただし、より詳しく分析してみると、香りを普段から用いている人や、今回用いたラベンダーが好みの香りだと回答した人は、成績向上効果が高いことが判明しました。

これらの結果を、先日、生活の木の社長および商品開発担当者にプレゼンしてきました。また、スポーツの前や最中に使用できるような、香り付きの制汗剤およびブレスレットという2つの商品案も提案してきました。これに対して、両氏からは、「ラベンダーは好き嫌いが分かれやすい香りである」「今回の対象者は男子学生が大半だったことから香りを普段使いする人が少なく、香りをかいだという状況事態が不自然(いつもの競技環境とは異なる)で脈拍が上がった人もいるだろう」などのコメントを頂きました。また、商品提案については、特にブレスレットについて高評価を頂き、事前に香りがセットされた商品よりも本人が後付けで好きな香りをセットする商品の方がよいだろう、などのコメントを頂きました。





ハーブやスパイスなど香りを放つものは、世界中で伝統的に用いられてきましたが、その効能・効果が必ずしも検証されたものばかりではありません。しかし香りは、当ゼミで取り組んだスポーツの成績向上や学習時の集中力向上のみならず、近年は認知症予防に効果があるという研究も進んでいます。嗅覚は五感のうち脳との関係性が最も強いためです。科学的な根拠を伴いながら、五感に訴える商品やマーケティング手法の開発は、今後も注目を集めそうです。


文責:北村真琴(流通マーケティング学科 准教授)

2015年3月24日火曜日

2014年度の卒業式が挙行されました


こんにちは。経営学部の関口和代です。

本日3月23日は卒業式でした。ご卒業おめでとうございます。
キャンパスの桜は、残念ながらまだ咲いていませんでしたが、
卒業生の皆さん、ご家族の皆さんの笑顔は満開でした。
















思い返しますと、2011年4月入学の皆さんは、
東日本大震災により、入学式が中止、
講義も1か月遅れでのスタートとなりました。
いろいろと大変なこともあったと思いますが、
学業を修められ、さまざまな経験を積んで
本日、卒業の日を迎えられました皆さんに、
心よりお祝いを申し上げます。












そして、約1週間後の4月1日には、
新たなお仲間を満開の桜とともにお迎えすることになります。
卒業生、在学生そして新入生の皆さんには、
「径寸十枚これ国宝に非ず 一隅を照らすこれ則ち国宝なり」
という言葉をお贈りしたいと思います。

これは伝教大師(767~822)の
『山家学生式』(さんげがくしょうしき)の冒頭にある言葉です。
「径寸(けいすん)十枚」とは金銀財宝等をさし、
「一隅」とは、今自分がいる場所のことを指します。

財宝ではなく、家庭や職場など、自分自身が置かれたその場所で
精一杯努力し、明るく光輝くことのできる人こそ
何事にも代え難い貴い国の宝である、ということです。
東京経済大学も、そのような有為な人材を育てる場
学びの場であるよう、教職員一同努力を続けています。

社会に出られる皆さんは、これから多くの理不尽なこと、
納得できないこともあるかと思います。
また、在学生、新入生の中には、
いわゆる「不本意」入学をされた方もいるかもしれません。
そのような時には、この「一隅を照らす」という言葉を思い出して
ポジティブに行動していただければ、道は開けるはず。

今いる場所で努力できない人は、
どこにいても不平・不満を持つとも言われます。
2012年のベストセラーにもなりました
「置かれた場所で咲きなさい」(渡辺和子著/幻冬舎)も
同様の趣旨かと思います。
ご縁があって東京経済大学で一緒に過ごすわけですから、
積極的に、前向きに、そして貪欲に学生生活を送ってほしいと思います。


先週、柴田先生がご紹介された「グローバルキャリア入門」という
特別講義も、たくさんの貴重な経験を積むことがてきると思います。
その他、いろいろな講義、プログラムが用意されていますので、
是非活用してください。


(経営学部:関口和代)

2015年3月17日火曜日

グローバル・キャリア入門の説明会を行いました

皆さんこんにちは、経営学部教員の柴田です。
昨日、3月16日に、2015年度から開講する新規科目「グローバル・キャリア入門」の説明会を行いました。
今回は経済のグローバル化と大学教育について考えてみたいと思います。

企業活動のグローバル化
「グローバル化」という言葉から、皆さんは何を連想するでしょうか?
日本に限らず、世界各地に工場や営業所を何か所も持つ大企業や、そこで働く、英語を駆使して
世界中を忙しく飛び回るビジネスエリートの姿でしょうか?たしかに、1970年代ぐらいの
「グローバル企業」には、そのようなイメージがあったように思います。私などは、まさに
その時代に学生生活を過ごし、会社に就職したために、いずれは自分も海外赴任してみたいと
思っていました。海外にいくつもの活動拠点を持つ企業は、一部の大企業に限られていましたし、
その中でも海外赴任や海外出張というものは、仕事で成果を上げた社員へのご褒美的な色彩が
あったわけです。

しかし1985年のプラザ合意以降に状況は一変し、大企業に限らず中小企業でも海外との取引や
海外現地生産が、ごく普通に行われるようになりました。21世紀に入って、この傾向はますます
強まっています。地球規模で見て、航空会社や航空路線が増え、航空運賃が相対的に安上がりに
なれば、国境を越えて人の動きが活発化します。造船業が盛んになり、多数の大型貨物船が
就航するようになると、輸送費用が相対的に安くなり、原材料や商品の動きも国境を越えて
活発化します。なにも日本から海外に出ていくだけがグローバル化ではなく、日本で暮らして
いても、私たちの身の回りで外国人と接触する機会はどんどん増えていますし、日常的に
購入する、いかにも日本的な商品にも中国製や東南アジア製のものが多く見受けられます。
このように、今日では日本企業の活動の場は日常的にグローバル化しており、そこで働く人たちは、
好むと好まざるとに関わらず、海外を視野に入れた働き方をしなければならなくなってきている
わけです。

グローバル化に適した人材育成
上記のような状況にもかかわらず、実は2004(平成16)年以降、海外に留学する日本人学生の
数が減少に転じ、新入社員へのアンケート結果でも海外勤務を希望しない人の割合が増えて
いると言われています。「若者の内向き志向のあらわれ」であると言われますが、これは
とても残念なことであると思います。今こそグローバルに活躍できる人材が求められており
大きなチャンスが広がっていると考えるべきだと思うのですが・・・・・
政府も、国をあげてグローバル化に適した人材育成を進めようとしています。首相官邸が
まとめたグローバル化した世界の経済・社会の中にあって育成・活用していくべき
「グローバル人材」の概念としては、概ね以下のような要素が含まれるとされています。
 要素Ⅰ:語学力・コミュニケーション能力
 要素Ⅱ:主体性・積極性、チャレンジ精神、協調性・柔軟性、責任感・使命感
 要素Ⅲ:異文化に対する理解と日本人としてのアイデンティティー
この中で「コミュニケーション能力」「主体性・積極性」などは、以前から就職に際して
重視される能力と考えられているものです。つまり「グローバル人材」とは、従来から言われる
「就職に強い人材」に加えて、外国の異文化を柔軟に受け入れる能力を加えたものだと考える
ことができるでしょう。

グローバル化に適した人材育成と東京経済大学の取り組み
これまで、本学でもグローバル化に適した人材育成として、提携校への交換留学生の派遣を
進めたり、あるいはこのブログでも何回か取り上げてきたように、ゼミ単位で海外ゼミ研修に
派遣したり、さまざまな取り組みをおこなって、異文化コミュニケーション能力を高める
機会を増やしてきました。2015年度からは海外ゼミ研修に派遣するゼミの数を増すなど、
海外での異文化体験を得る学生を増やそうと努力しています。その一環として、2015年度から
経営学部で開講するのが「グローバル・キャリア入門」という科目です。これはタイの
バンコクにある泰日工業大学経営学部と提携して、海外から日本へ、日本から海外へ、という
双方向の交流をおこなうユニークな科目です。タイはASEAN圏にあって、多くの日本企業が
進出している国で、今後ますます日本との関係が深まると予想されます。5月には、まず
泰日工業大学の学生が本学に短期留学し、日本を学び、本学学生との交流企画をを行います。
次に8月には本学学生がタイに渡り、泰日工業大学での交流企画に参加するとともに、
現地の日系企業などを訪問し、見学や現地で働く人たちの生の声を聴く機会を設けます。
交流企画の中では、「タイで日本茶をもっと飲んでもらうためには、何が必要か?」などの
テーマを決めて、タイと日本の両方の学生が一緒になって問題を考える機会を設けます。
このようにして、現地の大学に留学するほどではないにせよ、タイの人たちのものの見方
考え方に触れ、さらにタイの日系企業で働く人たちの経験談を聞くことで、短期間に効率よく
グローバルな体験を深めることができます。

2020年の東京オリンピック・パラリンピックに向けて、日本国内にいてもグローバル化の
潮流には無縁ではいられなくなります。そのために海外から日本へ、日本から海外へ、という
双方向の交流をおこなう科目を開設することにしたわけです。皆さんのなかに、「留学する
ほどではないけれど、海外を体験してみたい」という方がいらっしゃったら、この科目に
トライしてみませんか?

(文責:経営学部 柴田高)

2015年3月9日月曜日

インド研究調査(前編)

流通マーケティング学科の丸谷です。5回目の執筆です。今回は講義が休みの期間でもあるので、研究者としての大学教員の側面について分かってもらうために、研究について書きたいと思います。少し長くなりそうなので、今回は前編です。
私はグローバル・マーケティング論の教員なので、研究もこの分野について行っており、夏と春の長期の授業がない期間を利用して、海外に研究調査に行きます。私の主な研究対象は世界最大の売上高を有するウォルマートのグローバルマーケティング戦略なので、ウォルマートの進出国を中心に研究調査に行くことになります。
ウォルマートは日本では西友というブランドで店舗を展開していますが、世界中に店舗があり、これまで米国、カナダ、メキシコ、中米地峡市場5か国(グアテマラ、エルサルバドル、ホンジュラス、ニカラグア、コスタリカ)、ブラジル、アルゼンチン、英国、南アフリカ、中国のウォルマートを訪れていました(なお、チリは訪問のため米国まで行ったのですが、大地震が起こり計画が延期になりました)。
今回はウォルマートが進出済みである最後の残された大国インドに研究調査に行きました。
ウォルマートのインド進出は現在までのところ、現地政府の外資に対する小売出店規制のためキャッシュアンドキャリーと呼ばれる卸売のみの20店舗の進出に留まっています。
現在、インド政府は段階的に小売事業に関しても規制緩和を行ってきており、現在までのところ単独ブランドでの小売事業者の進出は解禁され、日本でも人気のあるイケアは既に進出を果たしています。
今回の目的は本格的な解禁が近づきつつあるインド小売市場について現地の状況を確認することにありました。
今回のルートは以下通りです。
 
インドと日本の時差は3時間半、首都デリーまでは約10時間かかります。
成田を午前11時半発のフライトでしたが、到着は夜になるので、ホテルへ移動し明日に備えました。
2日目からは強行スケジュール午前中にインド商工会議所にて幹部の方に(写真参照)、午後は日本貿易振興機構の現地事務所にて、受入側と進出側の立場からインドの小売事情についてお話を伺いました。合間には現地小売業者の店舗にも随時立ち寄り、お話もうかがいます。



3日目は午前中インドで最大の売上シェアを誇るスズキ自動車(現地では合弁で進出しているのでマルチスズキ)の現地幹部の方に(写真参照)、午後はデリー郊外のグルガオンのNTTコミュニケーションズインディア社の現地幹部の方に、大成功する老舗日本メーカーと新興の日本企業の幹部の立場から現地の小売事情についてお話を伺った後、夜にコルカタに移動しました。



4日目は午前中現地の日本総領事館に伺い、総領事と面会し、インドのハバナと呼ばれる昔ながらの情景が残るコルカタにおける小売事情についてお話を伺い、古くからの町並みが残る現地の小売事情を調査した後、夜にはバンガロールに移動しました。


結構ハードな日程でしたが、フライト時間も10時間、時差が3時間半と少ないだけ、現地調査の機会が多い中南米に比べて楽な方です(例えばブラジルなどには1日以上のフライト、時差も地球の真裏のため大きいので)。

丸谷雄一郎(グローバル・マーケティング論担当)








 


 
 

2015年3月2日月曜日

卒業式は、どんなファッションやヘアスタイルがいいですか?


【学問のミカタ】ブログ全学コラボテーマ 『卒業』

 
経営学部の本藤貴康(流通論、流通マーケティング入門、地域インターンシップ担当)です。毎月、学内横断的に同じテーマでブログを書くことになりました。初回のテーマは「卒業」です。

寒さが和らぎ始めると「卒業」の季節です。この「卒業」に焦点をあてたマーケティングは、数多く仕掛けられています。マーケティングと一言で表現しても、ブランディング(ブランド価値の育成・確立)も見られますし、プロモーション(販売促進や営業促進)は枚挙にいとまがありません。

みなさんは「卒業」というと、記憶の中で飛び交う曲がありませんか?

丙午:ひのえうま世代(1966年度生まれ)の僕にとっては、『ほたるの光』でもなければ『仰げば尊し』でもありません。柏原芳恵の『春なのに』が断トツのポジションを獲得しています。これはちょうど僕の高校1年の冬にリリースされたヒットソングで、明らかに春の卒業シーズンを意識したタイミングでした。「卒業」という節目に絡めたヒットソングを挙げるとキリがありません。ほかにも、『卒業』(尾崎豊)は3月にリリース、『さくら』(森山直太朗)は3月にリリース、『卒業まで、あと少し』(GLAY)は2月発売のアルバムでリリースなどのように、リリースの時期をマーケティング戦略的に設定してロングヒットのポジションを獲得しています。これは、マーケティング的な視点から考えると、ブランディングを意識した戦略と言えます。(もちろん、卒業ソングもタイミングを敢えてズラすこともありますが・・)
 



プロモーションについて考えてみます。大学生が卒業前に消費するシーンとしては、卒業旅行、卒業式、卒業コンパなどがメインイベントかもしれませんが、卒業後(入社前)の消費活動としては、仕事用の洋服や小物の購入はありますし、一人暮らしを始める新社会人は新生活グッズの購入もありそうです。
最近は、卒業旅行も1回だけではなく、部活やサークルの友達との卒業旅行、ゼミの卒業旅行、個人的な少数グループでの卒業旅行など、何回もの卒業旅行が企画されています。卒業式では、女子学生は「袴」や「ドレス」を買ったりレンタルしたりします。大学近くの美容室では、卒業シーズンが近づくにつれて着付けやヘアセットなどの営業広告が加速しています。

このような節目における消費者の購買行動は、予算上限の歯止めがゆるくなる傾向が強まり、核となる商品やサービスに多様なオプションを用意して、「あなただけのプラン」を選択肢として見せることは売上アップにつながります。「卒業」のような節目の消費活動では、「みんなと同じように」という同質化の需要喚起と「あなただけの」という差別化の需要喚起の両面からの働きかけが可能になります。みなさんも、「友達と同じように着飾りたい」という気持ちもあれば、「同じ袴やドレスは着たくない」という気持ちも理解できるのではないでしょうか。



 
文責:本藤貴康(東京経済大学教授)
担当科目:流通マーケティング入門、流通論、地域インターンシップ、
フレッシャーズセミナー